トランジスタは単体ではスイッチにすぎない。チップとして動かすには、数十億個規模のトランジスタを信号線、電源線、クロック線で接続する必要がある。この接続を作るのが配線工程であり、前工程の後半にあたる BEOL の中心である。
配線工程では、下層に細く密なローカル配線を作り、上層に太く低抵抗なグローバル配線を作る。上へ行くほど配線ピッチは広くなり、電源やクロックのような長距離・大電流の配線に使われる。
多層配線
配線層は、金属と絶縁膜を何段も重ねた構造である。横方向の金属線をメタル、上下方向の接続をビアという。
M5 ======== ========
| via | | via |
M4 ==== ======== ====
| via |
M3 ======== ========
| via |
M2 ==== ==== ====
| via |
M1 == == == == == ==
M1 付近はトランジスタに近く、細かい標準セル内の接続に使われる。上層は抵抗を下げるために厚く広く作られ、電源メッシュや長距離信号に使われる。
材料
古い世代ではアルミ配線が広く使われた。アルミは加工しやすいが、抵抗やエレクトロマイグレーションの面で限界がある。微細化が進むと、より低抵抗な銅配線が主流になった。
銅はシリコンや絶縁膜中に拡散しやすく、デバイス特性を悪化させる。そのため、銅配線の周囲にはバリアメタルを入れる。バリアは拡散を防ぐ一方で、配線断面の一部を占めるため、細い配線では有効な銅断面が減って抵抗が上がる。
配線材料では次のような性質を同時に見る。
- 抵抗率が低いこと
- 微細な溝へ埋め込みやすいこと
- 絶縁膜やバリアと密着すること
- 熱や電流で移動しにくいこと
- CMP や洗浄で制御しやすいこと
ダマシンプロセス
銅は反応性ガスで揮発性生成物を作りにくく、アルミのようにエッチングで配線形状を作るのが難しい。そのため、先に絶縁膜へ溝を作り、そこへ銅を埋め込むダマシンプロセスが使われる。
- 層間絶縁膜を成膜する
- リソグラフィで配線溝やビア穴を指定する
- エッチングで絶縁膜に形状を作る
- バリアメタルとシード層を成膜する
- 電解めっきで銅を埋め込む
- CMP で余分な銅を除去し、表面を平坦化する
ビアと配線溝を別々に作る方法もあるが、ビアと溝をまとめて形成してから銅を埋めるデュアルダマシンも使われる。工程数を減らせる一方、エッチング形状とバリア被覆の制御が難しくなる。
絶縁膜と low-k
配線同士の間には層間絶縁膜がある。配線遅延は抵抗 R と容量 C の積で効くため、金属の抵抗を下げるだけでなく、絶縁膜の誘電率を下げて容量を小さくする必要がある。
誘電率の低い絶縁膜を low-k 膜という。low-k 膜は配線容量を下げられるが、一般に機械的に弱く、吸湿やプラズマダメージにも注意が必要である。空孔を含む porous low-k では、加工や洗浄で膜質を壊さないことが特に重要になる。
CMP
配線を積み重ねるには、各層の表面を平坦に保つ必要がある。段差が大きいまま次のリソグラフィへ進むと、焦点が合わず線幅がばらつく。CMP は、化学反応と機械研磨を組み合わせて表面を平坦化する工程である。
配線 CMP では、余分な銅を取り除きながら、必要な溝の中の銅は残す必要がある。削りすぎるとディッシングやエロージョンが起き、配線抵抗や信頼性が悪化する。削り残しがあれば、隣の配線とショートする。
RC 遅延
微細化でトランジスタは速くなるが、配線は単純には速くならない。配線が細くなると抵抗が増え、配線間隔が狭くなると容量結合が増える。結果として、回路の速度はトランジスタではなく配線で決まることがある。
対策としては、上層の太い配線を使う、バッファを挿入する、配線長を短くする、クロックツリーを工夫する、low-k 膜を使うなどがある。設計とプロセスの両方で RC を抑える必要がある。
信頼性
配線は長時間の動作で劣化する。代表的な故障モードは次の通りである。
| 現象 | 内容 |
|---|---|
| エレクトロマイグレーション | 電流で金属原子が移動し、断線やショートを起こす |
| ストレスマイグレーション | 熱応力でボイドが発生・成長する |
| TDDB | 絶縁膜が電界で徐々に劣化し破壊する |
| クロストーク | 隣接配線の容量結合で信号が揺れる |
| IR ドロップ | 電源配線の抵抗で電源電圧が下がる |
配線幅を広げれば信頼性は上がるが、面積は増える。電源配線を太くすれば電圧降下は減るが、信号配線の場所を圧迫する。配線工程は、微細加工、材料、回路設計、熱設計が強く結びつく領域である。