洗浄は、ウェーハ表面からパーティクル、金属汚染、有機物、自然酸化膜、エッチング残渣を取り除く工程である。半導体プロセスでは、洗浄は補助作業ではない。清浄な表面でなければ、成膜、酸化、ドーピング、接合、配線のすべてが不安定になる。
微細な配線やコンタクトでは、目に見えない粒子 1 個がショートや断線を起こす。金属汚染は pn 接合リークや酸化膜破壊を増やす。有機残渣は成膜密着性やエッチング形状を悪化させる。
汚染の種類
洗浄で対象になる汚染は一種類ではない。
| 汚染 | 例 | 影響 |
|---|---|---|
| パーティクル | 粉じん、研磨粒子、反応生成物 | 断線、ショート、露光欠陥 |
| 有機物 | レジスト残り、溶媒、油分 | 成膜不良、密着不良 |
| 金属 | Fe, Cu, Ni, Na | リーク、酸化膜信頼性低下 |
| 自然酸化膜 | 空気中でできる薄い酸化膜 | 接触抵抗、界面品質 |
| ポリマー | ドライエッチング側壁生成物 | コンタクト不良、残渣 |
工程ごとに落としたい汚染と守りたい材料が違うため、洗浄液やプラズマ条件を使い分ける。
RCA 洗浄
シリコンウェーハの代表的な洗浄に RCA 洗浄がある。古典的だが、考え方は現在の洗浄にもつながっている。
SC-1 はアンモニア水、過酸化水素水、水の混合液で、有機物やパーティクル除去に使われる。表面をわずかにエッチングしながら粒子を剥がす。
SC-2 は塩酸、過酸化水素水、水の混合液で、金属汚染を除去する。金属イオンを錯体化し、表面から取り除きやすくする。
RCA 洗浄の後に希フッ酸を使うと、自然酸化膜を除去できる。HF で酸化膜を落とした直後のシリコン表面は水素終端され、酸化される前に次工程へ進めることがある。
レジスト除去
リソグラフィ後のレジストは、エッチングやイオン注入が終われば不要になる。除去には、O2 プラズマによるアッシングや、有機溶媒、薬液洗浄が使われる。
イオン注入後のレジストは硬化していることがあり、通常より落としにくい。ドライエッチング後には側壁ポリマーやフッ素系残渣が残る。単にレジストを消すだけでなく、下地材料を傷めず、残渣と金属汚染を同時に管理する必要がある。
物理洗浄
薬液だけではなく、物理的な力も使われる。
- メガソニック洗浄: 高周波音波で粒子を剥がす
- ブラシ洗浄: CMP 後の粒子除去に使う
- スピンリンスドライ: 回転しながら純水洗浄と乾燥を行う
- IPA 乾燥: 表面張力によるパターン倒れを抑える
微細構造では、強すぎる洗浄がパターン倒れや膜剥離を起こす。粒子を落とす力と構造を壊さない力の間で条件を決める。
前工程と後工程の違い
FEOL では、シリコン表面やゲート絶縁膜界面に金属汚染を残さないことが非常に重要である。高温工程が続くため、汚染が拡散してデバイス内部へ入り込む危険がある。
BEOL では、銅や low-k 絶縁膜を傷めない洗浄が重要になる。強い酸化剤やプラズマは、金属腐食や low-k 膜の劣化を起こすことがある。
洗浄は「強く洗えばよい」工程ではない。落としたいもの、残したいもの、次工程で必要な表面状態を同時に満たす必要がある。半導体製造では、清浄な表面を作ること自体が精密なプロセスである。