フォトリソグラフィは、設計した回路パターンをウェーハ上へ転写する工程である。半導体プロセスでは、成膜した薄膜のうち「残したい場所」と「削りたい場所」を何度も作り分ける。その位置を決めるのがリソグラフィであり、微細化の中心にある技術でもある。
概要
基本的な流れは印刷に似ているが、扱う寸法はナノメートルからマイクロメートルの範囲になる。
- ウェーハ表面を洗浄する
- フォトレジストをスピンコートで塗る
- プリベークで溶媒を飛ばす
- マスクのパターンを露光する
- 現像してレジストパターンを作る
- エッチングやイオン注入で下地を加工する
- 不要になったレジストを除去する
ここで作ったレジストの凹凸は、最終的な材料そのものではなく、一時的な保護膜である。露光された場所だけ溶ける、または露光されていない場所だけ溶ける性質を使って、加工したい領域を選択する。
解像度
投影露光の解像度は、おおまかに次の式で表される。
R = k_1 \frac{\lambda}{NA}
は解像できる最小寸法、\lambda は露光波長、NA はレンズの開口数である。波長を短くする、開口数を大きくする、プロセス工夫で を下げる、という方向で微細化してきた。
ただし開口数を上げると焦点深度は浅くなる。つまり、細かく描けるほどウェーハ表面の平坦さ、レジスト膜厚、露光装置のフォーカス制御が厳しくなる。リソグラフィは「細い線が描けるか」だけでなく、「ウェーハ全面で同じ線幅を再現できるか」が重要である。
オーバーレイ
半導体チップは一度の露光で完成しない。ウェル、ゲート、コンタクト、配線、ビアなどの層を順に作るため、前の層と次の層を正確に重ねる必要がある。この重ね合わせ精度をオーバーレイという。
オーバーレイが悪いと、コンタクトが拡散層から外れたり、ビアが下層配線に十分乗らなかったりする。微細化では線幅だけでなく、重ね合わせ誤差の許容値も小さくなる。
レジスト
フォトレジストは、光によって溶解性が変わる感光性の樹脂である。スピンコートでは、ウェーハ中央に液体を落とし、高速回転で均一な薄膜に広げる。膜厚は回転数、粘度、溶媒、ベーク条件で決まる。
露光の前後にはベークが入る。
- プリベーク: 塗布後に溶媒を飛ばし、膜を安定させる
- PEB: 露光後に化学反応を進め、パターン形状を整える
- ハードベーク: 必要に応じてエッチング耐性を上げる
先端プロセスで使われる化学増幅型レジストでは、露光で酸を発生させ、その酸がベーク中に反応を連鎖的に進める。感度を上げられる一方、酸の拡散が線幅ばらつきやエッジ粗さに関わる。
ポジ
ポジ型レジストは、露光された部分が現像液に溶けやすくなる。マスクの透明な部分がウェーハ上で抜けるため、直感的には「光が当たった場所を削るための穴にする」用途でよく説明される。
ポジ型は高解像度のパターン形成に向き、量産ロジックでは広く使われる。現像後に残ったレジストが、エッチングやイオン注入から下地を守る。
ネガ
ネガ型レジストは、露光された部分が硬化して現像液に残りやすくなる。マスクの透明な部分がウェーハ上に残るため、ポジ型とは明暗が反転する。
厚膜を作りやすい材料もあり、MEMS、めっき、リフトオフなどで使われる。微細寸法だけを追う工程ではポジ型が目立つが、工程の目的によってネガ型も重要である。
レジスト下地
レジストを塗る前には、密着性や反射を制御する処理が入ることがある。
- HMDS: 表面を疎水化し、レジスト密着性を上げる
- BARC: 下地反射を抑え、定在波や線幅ばらつきを減らす
- 多層レジスト: 薄い高解像度レジストと厚い耐エッチング層を組み合わせる
ウェーハ上には金属、酸化膜、窒化膜、低誘電率膜など多様な材料が現れる。下地の反射率や段差が変わるため、同じ露光条件でもパターン形状が変わる。
露光装置
露光装置は、マスク上のパターンをウェーハへ転写する装置である。古い方式ではマスクとウェーハを近づけるコンタクト露光やプロキシミティ露光が使われた。現在のロジック量産では、縮小投影露光を行うステッパやスキャナが中心である。
スキャナでは、マスクとウェーハを同期して動かしながら露光する。レンズで 4 分の 1 などに縮小して転写するため、マスク上のパターンは実際のチップ寸法より大きい。露光フィールドを少しずつ移動し、ウェーハ全面に同じチップを繰り返し焼き付ける。
DUV
DUV は深紫外線を使う露光で、KrF 248 nm や ArF 193 nm のエキシマレーザーが代表である。ArF ではレンズとウェーハの間を液体で満たす液浸露光も使われ、実効的な開口数を高めて解像度を上げる。
DUV だけで最小寸法をさらに小さくするには、パターンを複数回に分けて作るマルチパターニングが使われる。これは露光回数や工程数が増えるため、コスト、オーバーレイ、歩留まりの面で重くなる。
EUV
EUV は 13.5 nm の極端紫外線を使う露光である。波長が短いため、DUV より細かいパターンを一度に描きやすい。ただし EUV 光は空気にもレンズ材料にも強く吸収されるので、装置内部は真空で、光学系は透過レンズではなく多層膜ミラーになる。
EUV では光源、ミラー、マスク、レジストのすべてが難しい。代表的な課題は次のようなものがある。
- 光源出力: 十分なスループットを出すには強い EUV 光が必要
- マスク欠陥: 反射型マスクなので内部欠陥の検査と補正が難しい
- レジスト感度: 感度を上げると露光量は減るが、粗さや欠陥が増えやすい
- 確率的欠陥: フォトン数が少ないことによるランダムな抜けやブリッジ
- ペリクル: マスク保護膜も EUV を吸収するため、透過率と耐熱性が課題
EUV は魔法の筆ではなく、短波長化によってマルチパターニングの負担を減らすための巨大なシステムである。実際の量産では、DUV と EUV を層ごとに使い分ける。
電子ビーム
電子ビームリソグラフィは、電子線でレジストを直接描画する方式である。マスクが不要で非常に細かいパターンを描けるが、基本的には一筆書きなので量産スループットが低い。研究、試作、フォトマスク作製で重要である。
解像度向上技術
露光装置の波長だけでなく、計算とプロセスの工夫でもパターンは改善される。
- OPC: マスク形状をあらかじめ歪ませ、ウェーハ上で目的形状に近づける
- 位相シフトマスク: 光の位相差を使ってコントラストを上げる
- オフアクシス照明: 照明条件を変えて特定方向のパターンを強調する
- ダブルパターニング: 密な線を 2 回に分けて作る
- SADP/SAQP: 側壁スペーサを使い、露光限界より細かいピッチを作る
回路設計側も、リソグラフィで作りやすいパターンを前提にする。自由な図形を何でも描くというより、一定ピッチの線や規則的なセル配置へ寄せることで量産性を確保する。
検査
リソグラフィ後には、パターンの線幅や位置を測る。
| 指標 | 意味 |
|---|---|
| CD | Critical Dimension。線幅や穴径 |
| LER/LWR | エッジや線幅の粗さ |
| Overlay | 前層との重ね合わせ誤差 |
| Defect | 欠け、ブリッジ、パーティクルなど |
| Focus/Exposure | 焦点と露光量の条件余裕 |
微細化で難しくなるのは、最小寸法そのものよりも、ウェーハ全面、ロット全体、長期間の量産で同じ形を出し続けることである。フォトリソグラフィは、光学、化学、機械制御、計測、設計ルールが組み合わさった工程である。