蒸気タービンは、高温高圧の蒸気をノズルと羽根列に通し、エンタルピー降下を回転仕事として取り出す機械です。
この章では、速度三角形、段落、反動度、ランキンサイクルとの接続を見ます。
見るところ
- 衝動タービンと反動タービン
- ノズルでの膨張と羽根での仕事
- 多段化による速度と圧力の分配
- 復水器、再熱、再生との関係
ランキンサイクル上の位置
蒸気タービンは、ランキンサイクルの膨張機です。 線図では、ボイラで過熱蒸気まで加熱したあと、タービンで低圧まで膨張する線として描かれます。 理想タービンなら等エントロピーなので縦線になりますが、実機では不可逆性により右へ傾きます。
Ts線図で見るランキンサイクル
蒸気タービンを含むランキンサイクルは、 線図で見ると熱の受け渡しが分かりやすくなります。 給水はポンプで高圧にされ、ボイラで加熱され、飽和液から飽和蒸気、さらに過熱蒸気へ進みます。 このボイラ加熱の面積が投入熱に対応します。
タービン膨張は理想的には縦線です。 膨張後に復水器で低温側へ熱を捨て、液体へ戻ります。 復水器温度を下げると膨張の終点圧力も下がり、タービンで使えるエンタルピー降下が増えます。 ただし、低圧側を下げすぎると低圧タービンが大型化し、出口湿りも増えます。
ランキンサイクルの熱効率は
です。 ここで はタービン仕事、 はポンプ仕事、 はボイラで入れた熱です。 ポンプ仕事は小さいことが多いので、タービンのエンタルピー降下をどれだけ軸仕事に変えられるかが効率に大きく効きます。
hs線図とタービン効率
線図では、タービンの仕事がエンタルピー降下として直接読めます。 同じ入口状態と出口圧力で、理想出口を 、実際の出口を とすると、タービン等エントロピー効率は
です。 実機では羽根列の摩擦、漏れ、湿り蒸気の液滴損失、排気損失によってエントロピーが増えます。 そのため、理想よりエンタルピー降下が小さくなり、同じ蒸気条件でも取り出せる仕事が減ります。
湿り度も重要です。 膨張が進んで飽和ドームの内側へ入ると、蒸気中に液滴が生じます。 液滴は羽根を摩耗させ、流れにも損失を与えるため、再熱サイクルで途中再加熱したり、入口蒸気を過熱したりして出口乾き度を確保します。
hs線図の読み方
蒸気タービンの 線図では、入口状態と出口圧力を決めるところから始めます。 入口が過熱蒸気なら、入口圧力と入口温度から と を読みます。 そこから同じエントロピーで出口圧力まで下ろした点が理想出口です。
実際出口は、等エントロピー効率を使って求めます。 出口のエンタルピーが分かると、乾き度も読めます。 この乾き度が低いほど、液滴損失と羽根の摩耗が大きくなります。
線図で注目する点は次の通りです。
- 入口蒸気がどれだけ過熱されているか
- 膨張線が飽和ドームにどの深さで入るか
- 再熱後に低圧段入口の温度がどれだけ戻るか
- 抽気によって給水加熱がどの温度で行われるか
蒸気タービンでは、単純に入口温度を上げるだけでなく、湿りを避けながら平均加熱温度を上げることが重要です。
速度三角形
蒸気タービンでは、ノズルで圧力を速度へ変え、羽根列で流れの向きを変えて回転仕事を取り出します。 羽根車周速を 、絶対速度の周方向成分を とすると、単位質量あたりの段仕事はオイラーのタービン式
で表されます。 入口と出口の速度三角形を見ると、どれだけの旋回成分を羽根が受け取ったかが分かります。
衝動段では、主にノズルで圧力降下を起こし、動翼では流れの向きを変えて運動量を受け取ります。 反動段では、静翼と動翼の両方で圧力降下が起こります。 反動度は、段全体のエンタルピー降下のうち動翼内で起こる割合です。
段効率と内部効率
タービン全体の効率は、各段の損失の積み重ねです。 ノズル損失、動翼損失、漏れ、ディスク摩擦、排気損失、湿り損失が内部効率を下げます。 段ごとの速度三角形がずれると、羽根入口で衝突損失が増え、出口に余分な速度エネルギーが残ります。
多段タービンでは、各段でのエンタルピー降下を小さくし、速度を扱いやすい範囲に保ちます。 高圧段では比体積が小さいため流路は小さく、低圧段では蒸気の比体積が大きくなるため長い羽根が必要になります。 低圧最終段の設計は、湿り、排気損失、機械強度が強く効きます。
多段化と再熱・再生
一段で大きなエンタルピー降下を処理すると、蒸気速度が過大になり損失が増えます。 そこで実機では高圧段、中圧段、低圧段へ分け、速度と圧力降下を段ごとに配分します。
再熱は、高圧タービンで一度膨張した蒸気をボイラへ戻して再加熱し、再びタービンへ入れる方法です。 平均加熱温度を上げ、低圧段出口の湿りを減らせます。 再生は、タービン途中から蒸気を抽気して給水を予熱する方法です。 ボイラで低温の水を加熱する部分を減らすため、サイクルの平均加熱温度が上がり、熱効率が改善します。