ガスタービンは、圧縮機、燃焼器、タービンを通して作動流体を連続的に流し、回転仕事を取り出す熱機関です。
この章では、ブレイトンサイクル、圧力比、タービン入口温度、再生・再熱・中間冷却を見ます。
見るところ
- 圧縮機での断熱圧縮
- 燃焼器での定圧加熱
- タービンでの断熱膨張
- ジェットエンジン、発電用タービンとの関係
ブレイトンサイクル
ガスタービンの理想サイクルはブレイトンサイクルです。 流体が連続的に流れるので、ピストン機関のような閉じた 線図よりも、 線図や 線図の方が読みやすくなります。
- : 圧縮機で断熱圧縮
- : 燃焼器で定圧加熱
- : タービンで断熱膨張
- : 外部への定圧放熱
線図では、理想圧縮と理想膨張は縦線、定圧加熱と定圧放熱は右上がり・左下がりの曲線として描かれます。 燃焼器は実際には化学反応の場ですが、圧力損失が小さい定圧加熱として近似します。
Ts線図で読むブレイトンサイクル
ブレイトンサイクルを 線図で読むと、どの温度で熱を入れ、どの温度で熱を捨てているかが見えます。 熱効率は、熱を入れる平均温度が高く、熱を捨てる平均温度が低いほど上がります。
読む手順は次の通りです。
- 圧縮機入口 から、理想圧縮なら等エントロピーに上へ進む
- 実際の圧縮では右へ傾き、出口温度 が理想より高くなる
- 燃焼器では圧力をほぼ一定に保ちながら温度を まで上げる
- タービンでは膨張して温度が下がる。実際の膨張は右へ傾く
- 排気で残った熱を外部へ捨てるか、再生器や蒸気サイクルで回収する
圧縮機出口温度が上がりすぎると、燃焼器で追加できる温度上昇が小さくなります。 タービン入口温度には材料温度の制限があるため、圧力比を上げれば常に出力が増えるわけではありません。
熱効率
圧力比を
とすると、理想ブレイトンサイクルの熱効率は
です。 圧力比を上げるほど、理想効率は上がります。 ただし、同じタービン入口温度 の制限があると、圧力比を上げすぎたときにタービンで取り出せる仕事と圧縮機に必要な仕事の差が小さくなります。
正味仕事は
です。 ガスタービンでは圧縮機仕事がタービン仕事のかなり大きな割合を占めるため、圧縮機効率の悪化は出力と効率の両方に強く効きます。
圧力比とタービン入口温度
理想効率だけを見ると、圧力比を上げるほど効率は上がります。 しかし、出力を見るにはタービン入口温度 の上限を同時に考える必要があります。 圧力比を上げると圧縮機出口温度 が上がり、圧縮機仕事も増えます。 ある範囲を超えると、タービン仕事から圧縮機仕事を引いた正味仕事はむしろ小さくなります。
比出力は
なので、線図ではタービン膨張のエンタルピー降下と圧縮機上昇分の差を見ます。 発電用では効率を重視し、航空用では比出力や重量、応答性も重視します。 同じブレイトンサイクルでも、目的によって最適な圧力比は変わります。
hs線図と部品効率
線図では、圧縮機とタービンの不可逆性を等エントロピー効率として表します。 圧縮機効率は
タービン効率は
です。 圧縮機では理想より高い出口エンタルピーになり、タービンでは理想より出口エンタルピーが高く残ります。 どちらも 線図では右向き、つまりエントロピー増大として現れます。
燃焼器の圧力損失も重要です。 燃焼器で全圧が落ちると、タービン入口の圧力が下がり、膨張で使える圧力比が小さくなります。 高温化だけでなく、流路損失を小さく保つことが効率に直結します。
実機の損失を線図で見る
ガスタービンの実機損失は、線図上では主に三つの形で現れます。
- 圧縮機の不可逆性: 線図で圧縮線が右へ傾き、必要仕事が増える
- タービンの不可逆性: 膨張線が右へ傾き、取り出せる仕事が減る
- 燃焼器・吸排気の圧力損失: 同じ温度でも使える圧力比が減る
さらに、タービン翼を冷却するために圧縮空気の一部を使うと、燃焼器を通る主流量やタービン仕事の見積もりが変わります。 冷却は高いタービン入口温度を可能にしますが、空気を抜くこと自体は損失にもなります。 高温化、冷却空気量、材料、圧力損失のバランスが設計の中心です。
再生・再熱・中間冷却
単純ブレイトンサイクルでは、タービン排気がまだ高温です。 この排熱で圧縮機出口空気を予熱するのが再生サイクルです。 燃料で加える熱量を減らせるため、排気温度が圧縮機出口温度より十分高い場合に有効です。
中間冷却は、圧縮を複数段に分けて途中で冷やし、圧縮仕事を減らします。 再熱は、膨張を複数段に分けて途中で再加熱し、タービン仕事を増やします。 ただし、どちらも熱を入れる平均温度や捨てる平均温度を変えるため、単に仕事が増えるだけで熱効率が上がるとは限りません。