混合サイクルは、高温側をガスタービンで使い、排熱を蒸気サイクルでさらに回収する構成です。 単独のサイクルで捨てていた熱をもう一段使うため、発電用途で高い熱効率を狙えます。
見るところ
- トッピングサイクルとしてのガスタービン
- ボトミングサイクルとしての蒸気タービン
- 排熱回収ボイラ
- 熱効率と設備複雑度のトレードオフ
サイクルの接続
混合サイクル、またはコンバインドサイクルは、ブレイトンサイクルとランキンサイクルを温度の高い順に重ねたものです。 ガスタービンは高温の燃焼ガスを直接使えるため、高温側の熱を受け持ちます。 その排気はまだ十分に高温なので、排熱回収ボイラで水を蒸気に変え、蒸気タービンを回します。
線図として見ると、上側にガスタービンのブレイトンサイクル、下側に蒸気タービンのランキンサイクルが置かれます。 熱の品質、つまり温度が高い部分をガスタービンで使い、温度が下がった後の熱を蒸気サイクルで回収する構成です。
温度レベルで考える
コンバインドサイクルの要点は、熱量ではなく温度レベルを分けて使うことです。 高温の燃焼ガスはガスタービンで使う価値が高く、排気として温度が下がった後でも、まだ水を蒸発させるには十分な温度を持ちます。 この残った温度差を蒸気サイクルで使うことで、単純なガスタービンより捨てる熱を減らします。
線図では、ガスタービンの排気温度がボトミングサイクルの熱源温度になります。 排気温度が高すぎると、蒸気サイクルで回収できる余地が大きい一方、ガスタービン単体としては排気に熱を残しすぎています。 排気温度が低すぎると、蒸気を作る温度差が不足します。 両者のバランスが全体効率を決めます。
熱効率
単純なガスタービンの熱効率を とし、ガスタービンで仕事にならず排気へ残った熱のうち、蒸気サイクルが有効に仕事へ変える割合を とします。 理想化して排熱をすべてボトミング側へ渡せるなら、全体効率は
と見積もれます。 この式は、単独サイクルで捨てていた熱をもう一度使うと効率が上がることを示しています。
ただし実機では、排気の熱をすべて利用できるわけではありません。 排気温度が低くなるほど熱交換に必要な面積が大きくなり、最後には給水や蒸気との温度差が小さくなります。 また、煙突へ出す排気温度を下げすぎると腐食やドラフトの問題が出ることもあります。
TQ線図とピンチ点
排熱回収ボイラは、 線図で考えると分かりやすいです。 横軸に移動した熱量 、縦軸に温度 をとり、ガスタービン排気が冷える線と、水・蒸気が加熱される線を同じ図に描きます。
水側には、給水加熱、蒸発、過熱の領域があります。 蒸発中は温度がほぼ一定なので、 線図では水平に近い線になります。 排気側の冷却線と水側の加熱線が最も近づく温度差をピンチ点と呼びます。
TQ線図の読み方
線図では、横軸を熱量、縦軸を温度として、排気ガスが冷えていく線と水・蒸気が加熱されていく線を重ねます。 二つの線が近いほど、熱交換は可逆に近くなります。 しかし温度差が小さすぎると、必要な伝熱面積が大きくなります。
読み方は次の順です。
- 排気ガスの入口温度と出口温度を見る
- 給水加熱、蒸発、過熱のどこで温度差が最小になるかを見る
- ピンチ点温度差が小さすぎないか、大きすぎないかを判断する
- 排気をどこまで冷やせるかを、腐食や煙突条件も含めて見る
- 単圧で合わない場合、多圧化で水側の温度線を排気側に近づける
単圧の排熱回収ボイラでは、水側の蒸発温度が一つなので、排気の冷却線と合いにくい部分が残ります。 多圧化すると、高圧・中圧・低圧の蒸発温度を分けられ、排気の温度分布に沿って熱を回収できます。
ピンチ点温度差を小さくすると、より多くの排熱を回収できます。 一方で熱交換器が大きくなり、圧力損失やコストも増えます。 混合サイクルの設計は、熱効率だけでなく設備規模、起動時間、部分負荷、保守性とのトレードオフです。
実機で効率を落とす要因
全体効率は、ガスタービン単体の効率、排熱回収ボイラの熱交換性能、蒸気タービンの内部効率、補機動力に分解して見ると扱いやすくなります。
- ガスタービンの圧縮機・タービン効率低下
- 燃焼器と排熱回収ボイラの圧力損失
- 排気から回収しきれない低温熱
- 蒸気タービン出口の湿り損失
- 給水ポンプ、冷却水ポンプ、ファンなどの補機動力
蒸気サイクルを多圧化すると、排気の冷却線に水・蒸気側の加熱線を近づけやすくなります。 高圧・中圧・低圧の複数の蒸気系統を使う理由は、排熱の温度分布に合わせて熱を受け取るためです。
部分負荷と起動
コンバインドサイクルは定格付近では高効率ですが、部分負荷では効率が落ちます。 ガスタービンの負荷を下げると排気温度や流量が変わり、排熱回収ボイラと蒸気タービンの条件も変わります。 蒸気系は熱容量が大きく、起動や停止にも時間がかかります。
線図で見ると、部分負荷ではガスタービンのサイクル点が動き、排気側の 線も変わります。 その結果、ピンチ点や蒸気温度、蒸気流量が設計点から外れます。 高効率だけでなく、負荷追従性、起動時間、最低負荷をどう扱うかが実用上の設計課題になります。