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ヒートポンプ

熱機関を逆向きに動かす冷凍サイクルとCOPを整理します

ヒートポンプは、仕事を投入して低温側から高温側へ熱を移す装置です。 熱を仕事へ変える熱機関とは逆向きのサイクルで、暖房、冷房、冷蔵、給湯に使われます。

熱機関では熱効率 𝜂 を使いますが、ヒートポンプでは投入仕事より大きな熱量を運べるため、成績係数 COP で評価します。

蒸気圧縮冷凍サイクル

代表的なヒートポンプは蒸気圧縮冷凍サイクルです。 冷媒を圧縮、凝縮、膨張、蒸発させながら熱を運びます。

  1. 12: 圧縮機で冷媒蒸気を圧縮する
  2. 23: 凝縮器で高温側へ熱を捨て、液化する
  3. 34: 膨張弁で減圧する
  4. 41: 蒸発器で低温側から熱を吸い、蒸発する

𝑝 線図では、横軸に比エンタルピー 、縦軸に圧力 𝑝 をとります。 圧縮機仕事、凝縮器で放出する熱、蒸発器で吸収する熱が、エンタルピー差として直接読めます。

冷凍サイクルの向き

ヒートポンプや冷凍機は、熱機関の逆向きに動くサイクルです。 熱機関では高温側から熱を受け取り、仕事を出し、低温側へ熱を捨てます。 冷凍サイクルでは仕事を入れ、低温側から熱を吸い上げ、高温側へ熱を捨てます。

𝑇𝑠 線図や 𝑝 線図では、サイクルの向きが熱機関と逆になります。 この向きを間違えると、COP と熱効率の意味を取り違えます。 ヒートポンプは熱を作る装置ではなく、仕事を使って熱の流れを逆向きにする装置です。

ph線図

蒸気圧縮サイクルでは 𝑝 線図が特に便利です。 おおまかには、圧縮は右上へ、凝縮は高圧側で左へ、膨張弁はほぼ鉛直下向き、蒸発は低圧側で右へ進みます。

理想化すると、膨張弁は断熱で軸仕事もない絞り過程なので

3=4

です。 この過程では仕事を取り出せず、圧力を落とすだけなので、エントロピーは増えます。 膨張機で仕事を回収できれば理論上は効率を上げられますが、小型機では複雑さやコストの方が大きくなりがちです。

ph線図の読み方

𝑝 線図では、圧縮機仕事と熱交換量が横方向の距離として読めます。 縦軸は圧力なので、高圧側が凝縮器、低圧側が蒸発器に対応します。

読む手順は次の通りです。

  1. 蒸発器出口の状態 1 を見る。通常は少し過熱した蒸気にする
  2. 圧縮機で 12 へ進む。実際の圧縮ではエントロピーが増え、出口エンタルピーが上がる
  3. 凝縮器で 23 へ進む。高圧側で熱を捨て、液体へ戻る
  4. 膨張弁で 34 へ進む。エンタルピーはほぼ一定で、圧力だけが下がる
  5. 蒸発器で 41 へ進む。低温側から熱を吸って蒸発する

蒸発器出口に液が残ると圧縮機を傷めるため、通常は少し過熱を持たせます。 凝縮器出口を少し過冷却すると、膨張弁後の気液混合のうち液体割合が増え、蒸発器で吸える熱が増えます。

COP

暖房として使う場合、目的は高温側へ渡す熱 𝑞𝐻 です。 暖房 COP は

COPH=𝑞𝐻𝑤in=2321

です。 冷房・冷凍として使う場合、目的は低温側から吸い取る熱 𝑞𝐿 なので

COPR=𝑞𝐿𝑤in=1421

です。 同じ装置でも、暖房 COP は冷房 COP より 1 だけ大きい関係になります。

理想的なカルノーサイクルなら

COPH,Carnot=𝑇𝐻𝑇𝐻𝑇𝐿,COPR,Carnot=𝑇𝐿𝑇𝐻𝑇𝐿

です。 高温側と低温側の温度差が小さいほど COP は高くなります。 逆に、寒い外気から高温の室内や給湯タンクへ熱を上げるほど、圧縮機に必要な仕事は増えます。

Ts線図と不可逆性

𝑇𝑠 線図では、蒸発器と凝縮器での熱交換を温度差として見ます。 冷媒と空気・水の温度差が大きいほど熱交換器は小さくできますが、不可逆性が増えて COP は下がります。 熱交換器を大きくし、流路損失を小さくし、圧縮機効率を上げることが、実機の性能改善につながります。

主な損失は次の通りです。

  • 圧縮機の等エントロピー効率が 1 より小さい
  • 凝縮器・蒸発器で有限の温度差が必要
  • 冷媒配管と熱交換器で圧力損失がある
  • 膨張弁の絞りで仕事を回収できない
  • 除霜、ファン、ポンプ、制御機器の補機動力がある

ヒートポンプの「効率」を読むときは、熱効率ではなく COP を使う点が重要です。 熱を作っているのではなく、低温側にある熱を仕事で高温側へ移しているため、COP は 1 を超えることができます。

COPを上げる方向

COP を上げる基本は、圧縮機が作る温度差を小さくすることです。 暖房なら、外気温度に近い蒸発温度で熱を吸い、室内や水に必要な最低限の凝縮温度で熱を捨てるのが有利です。 冷房なら、室内空気に近い蒸発温度で熱を吸い、外気に近い凝縮温度で捨てます。

線図上では、蒸発圧力を上げ、凝縮圧力を下げるほど、圧縮機のエンタルピー上昇が小さくなります。 ただし熱交換には有限の温度差が必要なので、熱交換器の面積、風量、霜付き、騒音、コストとの兼ね合いになります。

実機で見るべき点は次の通りです。

  • 圧縮機の等エントロピー効率
  • 蒸発器と凝縮器の温度差
  • 過熱度と過冷却度
  • 冷媒配管と熱交換器の圧力損失
  • 除霜運転やファン・ポンプの補機動力

カタログ上の COP だけでなく、外気温、負荷率、霜付き、給湯温度など、実際に使う条件でのサイクル点を見ることが重要です。