蒸気機関は、ボイラで作った高圧蒸気をシリンダに導き、膨張仕事をピストンから取り出す外燃機関です。
この章では、圧力-体積線図、弁装置、復水器、熱効率を整理します。
蒸気サイクル
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作動流体: 水と水蒸気
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入力: ボイラからの熱
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出力: ピストンの往復運動
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基本サイクル: ランキンサイクルの原型
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インジケータ線図
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カットオフと膨張比
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復水器の有無による効率差
蒸気機関は、燃焼ガスを直接シリンダへ入れず、ボイラで作った蒸気を作動流体にします。 そのため燃料の種類に比較的自由度がありますが、ボイラ、配管、復水器を含む装置全体は大きくなります。
蒸気機関の線図の特徴
蒸気機関では、シリンダ内の圧力を実測したインジケータ線図が重要です。 理想的なランキンサイクルをそのまま描くより、弁がいつ開き、いつ閉じるかが仕事に大きく効きます。 蒸気は給気中に流入し、カットオフ後はシリンダ内で膨張します。
線図では、給気中の高圧部、カットオフ後の膨張曲線、排気時の低圧部、次の給気前の圧縮部を分けて読みます。 高圧部が長いほど出力は増えますが、蒸気を多く消費します。 膨張部を長く使うほど熱効率は改善しますが、平均圧力は下がります。
インジケータ線図
蒸気機関の状態変化は、シリンダ内圧力とピストン体積を記録したインジケータ線図で読みます。 線図で囲まれた面積が、1 サイクルでピストンが受け取った図示仕事です。
典型的な単動機関では、次のような過程が現れます。
- 給気: 弁が開き、高圧蒸気がシリンダに入る
- カットオフ: 弁が閉じ、蒸気の供給が止まる
- 膨張: 閉じ込められた蒸気がピストンを押して仕事をする
- 排気: 排気弁が開き、低圧側へ蒸気を捨てる
- 圧縮: 残った蒸気が次の給気前に少し圧縮される
カットオフを早くすると、同じ蒸気をより長く膨張させられます。 これは熱効率には有利ですが、平均有効圧が下がるため、同じ大きさの機関から取り出せる出力は小さくなります。
平均有効圧を とすると、1 サイクルの図示仕事は
として表せます。 線図の複雑な形を、同じ面積の長方形へ置き換えた圧力が平均有効圧です。
カットオフと膨張比
カットオフは、給気弁を閉じて蒸気の供給を止めるタイミングです。 早いカットオフでは、少ない蒸気を大きく膨張させるため蒸気消費率が下がります。 遅いカットオフでは、高圧蒸気が長く入り、平均有効圧が上がるため出力は大きくなります。
インジケータ線図で見ると、カットオフが遅いほど高圧の水平に近い部分が長くなり、面積が増えます。 一方、膨張曲線で得られる追加仕事の割合は小さくなります。 機関車の発進時には大きなトルクが必要なのでカットオフを遅くし、巡航時には早めて効率を上げる、という使い分けができます。
膨張比を大きくしても、シリンダ壁での凝縮、漏れ、摩擦、排気損失があるため、理想通りには仕事が増えません。 線図が理想的な滑らかな膨張曲線から外れる部分に、実機の損失が現れます。
ランキンサイクルとの関係
蒸気機関は、熱力学的にはランキンサイクルの膨張機をピストンで実現したものと見られます。 基本形は次の通りです。
- ポンプで復水をボイラ圧力まで上げる
- ボイラで加熱し、蒸気を作る
- シリンダ内で蒸気を膨張させ、仕事を取り出す
- 排気を復水器または大気へ捨てる
ランキンサイクルの熱効率は
です。 蒸気機関では膨張機仕事 がピストンの図示仕事に対応します。 実機の軸出力で評価する場合は、さらに摺動部、弁装置、クランク機構の摩擦損失を差し引きます。
復水器と効率
排気を大気へ捨てる非復水式では、膨張の終点圧力が大気圧付近になります。 復水器を使うと排気側圧力を大気圧より低くでき、 線図の膨張仕事が増えます。 同時に、低温側温度を下げることで熱機関としての上限効率も上がります。
ただし復水器には冷却水、真空維持、ポンプが必要です。 また、シリンダ壁での凝縮と再蒸発は大きな損失になります。 蒸気が壁面で冷やされて凝縮すると、ボイラで入れた潜熱を有効な膨張仕事へ変換できません。 過熱蒸気を使う、蒸気を多段膨張させる、シリンダを保温する、といった工夫はこの損失を減らすためです。
複式機関
単一シリンダで大きく膨張させると、シリンダ内の温度変化が大きくなり、凝縮と再蒸発の損失が増えます。 そこで、高圧シリンダ、中圧シリンダ、低圧シリンダへ分けて段階的に膨張させる複式機関が使われます。
複式化すると、各シリンダの温度範囲が狭くなり、壁面凝縮が減ります。 また、一つのシリンダに過大な圧力差を持たせずに済みます。 線図としては、複数のインジケータ線図の面積を足し合わせて全体の仕事を見ます。 これは蒸気タービンで多段化する考え方と対応しています。