Kanade Electronicskanaelecom
🕐

555 タイマ IC

定番タイマ IC 555 の中身と基本回路

555 タイマ IC は、電子工作の古典です。 LED を点滅させる、ブザーを鳴らす、一定時間だけ出力する、簡単な PWM を作る。 マイコンを使えば一瞬でできることばかりですが、555 で組むと「時間を回路で作っている」感じがあって良いです。

1970 年代からある IC なのに、今でも普通に売っています。 長寿すぎる。

この記事では、555 の中身、ピンの意味、単安定、非安定、双安定の 3 つの基本動作を見ます。

555 の中身

555 の内部は、ざっくり次のようになっています。

VCC
 |
[5k]
 |---- 2/3 VCC ---- comparator ----+
[5k]                               |
 |---- 1/3 VCC ---- comparator ----+---- SR latch ---- output
[5k]                               |
 |                                 +---- discharge transistor
GND

5 kΩ の抵抗が 3 本直列に入っていて、13𝑉CC23𝑉CC の基準電圧を作ります。 この 2 つのしきい値をコンパレータで見て、SR ラッチを Set / Reset します。

出力はこの SR ラッチの状態で決まります。 また、内部には放電用トランジスタがあり、外付けコンデンサを GND へ放電できます。

つまり 555 は、

  • 13𝑉CC23𝑉CC を作る抵抗分圧
  • 2 個のコンパレータ
  • SR ラッチ
  • 放電トランジスタ
  • 出力ドライバ

を 1 つにまとめた IC です。 思ったより中身が素直です。

ピン配置

DIP 8 ピンの 555 は次のピン配置です。

Pin名前役割
1GND電源 GND
2TRIGトリガ入力。13𝑉CC 未満で Set
3OUT出力
4RESETLow で強制 Reset
5CTRLしきい値制御
6THRESHしきい値入力。23𝑉CC 超で Reset
7DISCH放電トランジスタのコレクタ
8VCC電源

使わない RESET は VCC に接続します。 浮かせると勝手にリセットされることがあります。

CTRL は内部の 23𝑉CC 基準点に触れるピンです。 普通は 10 nF 程度のコンデンサで GND に落としてノイズを減らします。 ここに電圧を入れると、発振周波数やパルス幅を外部から変えられます。

基本動作

TRIG が 13𝑉CC より低くなると、ラッチが Set されます。 出力は High になり、DISCH トランジスタは OFF になります。

THRESH が 23𝑉CC より高くなると、ラッチが Reset されます。 出力は Low になり、DISCH トランジスタは ON になります。

条件ラッチOUTDISCH
TRIG < 1/3 VCCSetHighOFF
THRESH > 2/3 VCCResetLowON
どちらにも引っかからないHold保持保持
RESET = LowResetLowON

この「13 で Set、23 で Reset」というヒステリシスが 555 の中心です。 外付けコンデンサを充電・放電し、その電圧が 1323 を行き来することで時間を作ります。

単安定動作

単安定動作 (monostable) は、トリガが入ると一定時間だけ High を出す動作です。 ワンショットタイマとも呼びます。

TRIG: ____|_|____________
OUT : ____-------________
          <  T  >

回路は次の雰囲気です。

VCC --- R ---+--- THRESH
             |
             C
             |
            GND

DISCH は R と C の接続点へつなぐ
TRIG は外部トリガへつなぐ

待機中、DISCH トランジスタが ON していて、コンデンサは放電されています。 TRIG を Low にすると出力が High になり、DISCH が OFF になります。 するとコンデンサが R を通して充電されます。

コンデンサ電圧が 23𝑉CC に達すると Reset され、出力は Low に戻ります。 DISCH が ON になり、コンデンサは放電されます。

パルス幅はだいたい次です。

𝑇=1.1𝑅𝐶

たとえば 𝑅=100𝑘Ω𝐶=10𝑢𝐹 なら、

𝑇=1.1×100000×0.000010=1.1𝑠

1 秒ちょっと High を出せます。 押しボタンを押したら一定時間だけ LED を光らせる、リレーを一定時間だけ入れる、チャタリングを雑に逃がす、みたいな用途に使えます。

非安定動作

非安定動作 (astable) は、勝手に High / Low を繰り返す発振動作です。 LED 点滅やブザーの発振に使います。

OUT: __----____----____----__

標準的な回路では、抵抗を 2 本、コンデンサを 1 個使います。

VCC --- RA ---+--- RB ---+--- C --- GND
              |          |
            DISCH     THRESH/TRIG

コンデンサは 𝑅𝐴+𝑅𝐵 を通って充電されます。 コンデンサ電圧が 23𝑉CC を超えると出力が Low になり、DISCH が ON します。 今度はコンデンサが 𝑅𝐵 を通って放電されます。 コンデンサ電圧が 13𝑉CC を下回ると出力が High になり、また充電が始まります。

High 時間、Low 時間、周期はだいたい次です。

𝑇H=0.693(𝑅𝐴+𝑅𝐵)𝐶
𝑇L=0.693𝑅𝐵𝐶
𝑇=0.693(𝑅𝐴+2𝑅𝐵)𝐶

周波数は、

𝑓=1.44(𝑅𝐴+2𝑅𝐵)𝐶

デューティ比は、

𝐷=𝑅𝐴+𝑅𝐵𝑅𝐴+2𝑅𝐵

標準回路では、High 時間が Low 時間より短くなりません。 つまりデューティ比 50 % 未満を作りにくいです。 50 % に近づけたい場合は 𝑅𝐴 を小さくしますが、DISCH トランジスタに流れる電流に注意します。

LED 点滅の例

LED を 1 秒前後で点滅させる例です。

RA = 10 kΩ
RB = 100 kΩ
C  = 10 uF

High 時間は、

𝑇H=0.693×(10000+100000)×0.000010=0.762𝑠

Low 時間は、

𝑇L=0.693×100000×0.000010=0.693𝑠

周期は、

𝑇=1.455𝑠

周波数は約 0.69 Hz です。 ゆっくり点滅します。

電解コンデンサを使う場合は極性に注意します。 コンデンサの負側は GND 側です。 逆につなぐと普通に嫌な気持ちになります。

デューティ比を変える

標準の非安定回路では、充電経路が 𝑅𝐴+𝑅𝐵、放電経路が 𝑅𝐵 なので、High が長くなりがちです。

デューティ比を広く変えたいときは、ダイオードを入れて充電経路と放電経路を分けます。

VCC --- RA ---|>|---+--- C --- GND
              RB ---|<|---+
                    |
                THRESH/TRIG

充電時は片方の抵抗、放電時はもう片方の抵抗を通るようにします。 これで High 時間と Low 時間を独立に近く調整できます。

PWM っぽい信号を作るなら、この方法か CTRL ピンを使います。 ただし、精度や安定性が必要ならマイコンや専用 IC を使った方が楽です。

双安定動作

双安定動作 (bistable) は、555 を SR ラッチとして使う動作です。 コンデンサを使わず、TRIG で Set、RESET で Reset します。

TRIG  -> Set
RESET -> Reset
OUT   -> 状態出力

これはフリップフロップのように使えます。 ボタンを押したら ON、別のボタンを押したら OFF、という回路です。

ただし、ロジック IC のラッチやマイコンがあるなら、555 でわざわざやる必要はあまりありません。 でも 555 の中身が SR ラッチだと理解するには良い動作です。

CTRL ピン

CTRL ピンは、内部の基準電圧を外から動かすためのピンです。 通常は 10 nF 程度で GND に落とします。

CTRL --- 10 nF --- GND

ここに外部電圧を入れると、23𝑉CC の基準が変わります。 すると、コンデンサがどの電圧まで充電されたら Reset されるかが変わります。

つまり発振周波数やパルス幅を電圧で変えられます。 簡単な VCO (Voltage Controlled Oscillator) になります。

音を出す回路で CTRL にゆっくり変化する電圧を入れると、周波数が揺れます。 雑シンセです。 楽しい。

RESET ピン

RESET ピンを Low にすると、出力は強制的に Low になります。 使わない場合は VCC に接続します。

マイコンや別回路から 555 の発振を止めたい場合は、RESET を制御すると便利です。 RESET を Low にすれば、非安定発振中でも止まります。

RESET を浮かせるのはやめます。 ノイズで勝手に止まることがあります。 555 は古典ですが、浮いた入力には普通に弱いです。

出力段

NE555 の出力は、ある程度の電流を source / sink できます。 LED や小さなブザーなら直接駆動できることがあります。

ただし、モーター、リレー、大きな LED などは直接駆動しない方がよいです。 外部にトランジスタや MOS-FET を置きます。

555 OUT --- Rg --- Gate  N-MOS
                     |
                  load

リレーやモーターのような誘導性負荷にはフライバックダイオードを入れます。 555 が壊れると悲しいので、出力電流の定格と負荷の種類は見ます。

バイポーラ版と CMOS 版

昔ながらの NE555 はバイポーラトランジスタで作られています。 出力電流は強めですが、消費電流も大きめです。

CMOS 版の 555 もあります。 LMC555、TLC555 などです。

種類特徴
バイポーラ出力が強い、消費電流は大きめ
CMOS低消費電力、入力電流が小さい

電池駆動なら CMOS 版を使うとかなり効きます。 一方、古い作例の部品表は NE555 前提のことが多いです。 置き換えるときは、電源電圧、出力電流、入力しきい値、最大周波数を確認します。

電源デカップリング

555 は出力が切り替わる瞬間に電源電流が跳ねます。 電源ピンの近くにデカップリングコンデンサを置きます。

VCC --- 0.1 uF --- GND

ブレッドボードで 555 を動かすとき、電源が揺れて変な発振をすることがあります。 とりあえず 0.1 uF を近くに置く。 古典的ですが効きます。

タイマ用の大きなコンデンサとは別に、電源デカップリングを置きます。 役割が違います。

よくある失敗

RESET を浮かせる

RESET は使わないなら VCC に接続します。 浮かせるとノイズで止まります。

CTRL を放置してノイズに弱くなる

CTRL は普通 10 nF で GND に落とします。 必須ではないこともありますが、入れておくと安定します。

抵抗値を小さくしすぎる

非安定回路で 𝑅𝐴𝑅𝐵 を小さくしすぎると、DISCH トランジスタに大きな電流が流れます。 周波数を上げたいからといって抵抗を雑に下げると熱くなります。

電解コンデンサの漏れを忘れる

長い時間を作るために大きな抵抗と大きな電解コンデンサを使うと、漏れ電流や誤差が効きます。 数分以上の正確なタイマを 555 で作るのはつらいです。 そのへんはマイコンか RTC に任せた方が幸せです。

出力に重い負荷を直結する

LED 1 個ならともかく、リレーやモーターを直接つなぐのは避けます。 トランジスタや MOS-FET を使います。

まとめ

555 は、コンパレータ、SR ラッチ、放電トランジスタをまとめたタイマ IC です。

  • TRIG が 13𝑉CC 未満で出力 High
  • THRESH が 23𝑉CC 超で出力 Low
  • 単安定では 𝑇=1.1𝑅𝐶
  • 非安定では 𝑓=1.44(𝑅𝐴+2𝑅𝐵)𝐶
  • RESET は使わないなら VCC へ
  • CTRL は 10 nF 程度で GND へ
  • 電源には 0.1 uF のデカップリングを置く

マイコン全盛の今だと、555 は必須部品ではないかもしれません。 でも、抵抗とコンデンサの充放電で時間が生まれ、それをコンパレータとラッチでデジタル信号にする、という流れがよく見えます。

電子回路の「時間」の入門として、まだまだ良い IC です。