ダイオードは、電流を一方向にだけ流す素子です。 電子工作では LED、電源の逆接保護、リレーのフライバック、整流、信号のクリップ、レベルシフトなど、かなりいろいろなところに出てきます。
見た目は地味ですが、半導体の基本がかなり詰まっています。 ダイオードが分かると、トランジスタや MOS-FET も少し見えやすくなります。
PN 接合
ダイオードの中身は、P 型半導体と N 型半導体をくっつけたものです。
P | N
P 型半導体には正孔が多く、N 型半導体には電子が多いです。 この 2 つを接合すると、境界付近で電子と正孔が再結合し、キャリアの少ない領域ができます。 これを空乏層と呼びます。
空乏層は、電流が流れにくい壁のように働きます。 ここに外から電圧をかけることで、この壁を薄くしたり厚くしたりします。
順方向と逆方向
P 側を高く、N 側を低くすると順方向バイアスです。 空乏層が薄くなり、電流が流れます。
+ ---- P | N ---- -
逆に、P 側を低く、N 側を高くすると逆方向バイアスです。 空乏層が厚くなり、ほとんど電流が流れません。
- ---- P | N ---- +
理想ダイオードなら、順方向は短絡、逆方向は開放です。 現実のダイオードは、順方向でも電圧降下があり、逆方向でも少し漏れます。
順方向電圧
シリコンダイオードは、順方向に電流を流すとだいたい 0.6 V から 0.7 V ぐらい電圧が落ちます。 これを順方向電圧 と呼びます。
| 種類 | の雰囲気 |
|---|---|
| シリコンダイオード | 0.6 V から 0.7 V |
| ショットキーバリアダイオード | 0.2 V から 0.4 V |
| 赤色 LED | 1.8 V から 2.2 V |
| 白色 / 青色 LED | 2.8 V から 3.4 V |
実際には は一定ではありません。 電流、温度、部品の種類で変わります。
ダイオードの電流電圧特性は指数関数です。
式だけ見ると怖いですが、電子工作ではまず「ある程度の電圧を超えると急に流れる」と思えばよいです。 いきなり半導体物理で殴られるとつらいので。
整流
ダイオードの一番基本的な用途は整流です。 交流の片側だけを通して、直流っぽい波形を作ります。
AC ----|>|---- OUT
この回路では、入力が正のときだけ電流が流れます。 負の半周期は遮断されます。 これを半波整流と呼びます。
もう少しちゃんとやるなら、ダイオード 4 本でブリッジ整流回路を作ります。
+----|>|----+
AC ~---+ +--- +OUT
+----|<|----+
+----|<|----+
AC ~---+ +--- -OUT
+----|>|----+
交流の正負どちらの半周期でも、出力には同じ向きに電流が流れます。 電源回路でよく見るやつです。
逆接保護
電源を逆につないだときに回路を守るためにも使えます。
一番単純なのは、電源ラインに直列にダイオードを入れる方法です。
VIN ----|>|---- 回路
正しく接続したときだけ電流が流れ、逆接すると遮断されます。 ただし、順方向電圧ぶんだけ電圧が落ちます。 5 V 回路で 0.7 V 落ちると、ちょっと痛いです。
電圧降下を小さくしたいなら、ショットキーバリアダイオードや P チャネル MOS-FET を使います。 MOS-FET 逆接保護は少し高度ですが、電圧降下が小さくて便利です。
フライバックダイオード
リレー、ソレノイド、モーターのようなコイルには、電流を流し続けようとする性質があります。 電流を急に切ると、高い電圧が発生します。
これをそのままにすると、トランジスタや MOS-FET が壊れます。 そこで、コイルに並列にダイオードを入れます。
VCC ----+---- コイル ----+---- スイッチ ---- GND
| |
+------|<|------+
スイッチを OFF にした瞬間、コイル電流はダイオードを通って回ります。 このダイオードをフライバックダイオード、または還流ダイオードと呼びます。
リレーをトランジスタで駆動するときに、ダイオードを入れ忘れるのはかなり定番の失敗です。 机の上では一回動いても、しばらくすると壊れたりします。 つらい。
ショットキーバリアダイオード
ショットキーバリアダイオードは、PN 接合ではなく金属と半導体の接合を使ったダイオードです。
特徴は次の通りです。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 順方向電圧が低い | 0.2 V から 0.4 V 程度のものが多い |
| 速い | 高速スイッチングや高周波に向いている |
| 逆漏れが大きい | 温度が上がると漏れやすい |
| 耐圧が低め | 高電圧にはあまり向かない |
電源の ORing、逆接保護、スイッチング電源、高周波検波などでよく使います。
Wi-Fi の電波で LED を光らせるレクテナ工作でも、普通のダイオードよりショットキーの方が向いています。 高周波でちょっとでも電圧を取り出したいので、順方向電圧が低く、応答が速いことが効きます。
ツェナーダイオード
普通のダイオードは、逆方向には電流を流しません。 しかし逆方向電圧を上げていくと、ある電圧で急に電流が流れます。 この降伏を利用するのがツェナーダイオードです。
VIN ---- R ----+---- OUT
|
ZD
|
GND
この回路では、OUT の電圧がツェナー電圧付近に保たれます。 簡易的な基準電圧、過電圧保護、信号のクリップなどに使えます。
ただし、ツェナーダイオードでちゃんとした電源を作るのは効率がよくありません。 電流を捨てながら電圧を保つので、負荷電流が変わる用途では雑になりがちです。 基準電圧や保護として見るのが自然です。
LED
LED (Light Emitting Diode) は、電流を流すと光るダイオードです。
PN 接合に順方向電流を流すと、電子と正孔が再結合します。 このとき、エネルギー差が光として出る材料を使うと LED になります。
光の色は、半導体材料のバンドギャップで決まります。 エネルギーが大きいほど波長が短くなります。
| 色 | 順方向電圧の雰囲気 |
|---|---|
| 赤 | 1.8 V から 2.2 V |
| 緑 | 2.0 V から 3.0 V |
| 青 | 2.8 V から 3.4 V |
| 白 | 2.8 V から 3.4 V |
| 赤外 | 1.1 V から 1.5 V |
白色 LED は、青色 LED と蛍光体を組み合わせて白く見せているものが多いです。 青色 LED が発明されて世界が明るくなった、という話につながります。
LED には抵抗を入れる
LED は電圧で駆動するのではなく、電流で駆動します。 そのまま電源につなぐと、電流が流れすぎて壊れます。
VCC ---- R ----|>|---- GND
抵抗値はざっくり次で決めます。
たとえば 5 V 電源、赤色 LED の 、電流 5 mA にしたい場合、
近い標準値で 560 Ω や 680 Ω を使います。 最近の LED は明るいので、表示用なら 1 mA でも十分なことが多いです。 目に優しい。
信号のクリップ
ダイオードは、信号を一定の範囲に抑える用途にも使えます。
IN ---- R ----+---- OUT
|
|>| to VCC
|
|<| to GND
|
OUT が VCC より高くなりすぎると上側のダイオードが流れます。 OUT が GND より低くなりすぎると下側のダイオードが流れます。
マイコンの入力保護にも似た構造が入っています。 ただし、保護ダイオードに大電流を流してよいわけではありません。 外から電圧を入れるなら、必ず直列抵抗などで電流を制限します。
まとめ
ダイオードは一方向に電流を流す素子です。
- 順方向では電流が流れる
- 逆方向ではほとんど流れない
- 順方向電圧 がある
- 整流、逆接保護、フライバック、クリップに使える
- LED は光るダイオード
- LED には電流制限抵抗を入れる
単純な部品に見えますが、使いどころはかなり広いです。 次にトランジスタを見るときも、ベース-エミッタ間の PN 接合やボディダイオードとして、また顔を出します。