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オペアンプ

負帰還でアナログ信号を扱うための基本部品

オペアンプ (Operational Amplifier) は、アナログ回路の万能部品です。 センサ信号の増幅、フィルタ、積分、微分、加算、差動信号の受信、基準電圧のバッファなど、かなりいろいろな場所に出てきます。

名前だけ見ると強そうですが、最初に理解することは一つです。

オペアンプは、負帰還をかけて使う差動増幅器です。

これだけです。 これが分かると、反転増幅回路も、非反転増幅回路も、ボルテージフォロワも、かなり同じ顔に見えてきます。

オペアンプは電気的なテコ

オペアンプには 2 つの入力と 1 つの出力があります。

R1
R1
R2
R2
R1
R1
Vin
Vin
R2
R2
Vin
Vin
Vout
Vout
Vout
Vout
反転増幅
反転増幅
R1
R1
R2
R2
R1
R1
Vin
Vin
R2
R2
Vin
Vin
Vout
Vout
Vout
Vout
非反転増幅
非反転増幅
Viewer does not support full SVG 1.1

出力は、2 つの入力の差を大きく増幅したものです。

𝑉out=𝐴(𝑉+𝑉)

𝐴 はオープンループゲインです。 理想オペアンプでは無限大と考えます。

𝐴

もちろん現実には無限大ではありません。 ただし数万から数百万ぐらいのゲインを持つので、回路を読むときはまず無限大として扱うと楽です。

理想オペアンプ

解析で使う理想オペアンプの仮定は次です。

仮定意味
入力電流が 0入力端子には電流が流れない
ゲインが無限大𝑉+𝑉 を極端に増幅する
出力抵抗が 0出力電圧を保ったまま電流を流せる
帯域が無限大どんな周波数でも同じように動く

実際のオペアンプでは、入力電流も少しあります。 出力電流にも限界があります。 電源電圧を超える出力は出せません。 高い周波数ではゲインが落ちます。

理想は理想です。 でも最初の計算では理想で殴った方が見通しがよいです。

負帰還

オペアンプの出力を、入力 - 側へ戻すことを負帰還と呼びます。

        +--------+
Vin --->| +    out|---- Vout
        |        |
        | -      |
        +---<----+

出力が上がると - 入力も上がります。 すると 𝑉+𝑉 が小さくなり、出力の上がりすぎが抑えられます。

この自己調整によって、オペアンプは 𝑉+=𝑉 になるように働きます。 これがバーチャルショートです。

バーチャルショート

負帰還がかかっていて、オペアンプが正常に動作範囲内にあるとき、

𝑉+=𝑉

とみなせます。

ただし、入力端子間が本当に短絡されているわけではありません。 入力電流はほぼ 0 です。

𝐼+=𝐼=0

電圧は同じなのに、電流は流れない。 これがバーチャルショートです。 言葉だけ見ると胡散臭いですが、オペアンプ解析の最重要テクです。

ボルテージフォロワ

一番簡単な負帰還回路はボルテージフォロワです。

Vin ---> +|\
          | \____ Vout
Vout --->-| /
          |/

負帰還により 𝑉+=𝑉 なので、

𝑉out=𝑉in

電圧は変わりません。 では何が嬉しいかというと、入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低くなります。

弱いセンサ信号を、後段の回路に影響されにくい形で渡せます。 電圧のバッファです。

反転増幅回路

反転増幅回路は、入力信号を反転して増幅します。

Vin --- R1 ---+---- R2 ---- Vout
              |
              |\
GND ----------| +\
              |   \____ Vout
              | - /
              |/

+ 入力は GND なので、バーチャルショートにより - 入力も 0 V とみなせます。 ここを仮想接地と呼びます。

入力抵抗 𝑅1 に流れる電流は、

𝐼=𝑉in𝑅1

オペアンプ入力には電流が流れないので、この電流はそのまま 𝑅2 に流れます。

𝑉out=𝑅2𝐼

よって、

𝑉out=𝑅2𝑅1𝑉in

反転増幅回路のゲインは抵抗比だけで決まります。 オペアンプの巨大なゲインを、負帰還で使いやすいゲインに押さえ込んでいるわけです。

非反転増幅回路

非反転増幅回路は、入力信号と同じ符号で増幅します。

Vin ---> +|\
          | \____ Vout
     +----| /
     |    |/
     |
    R1
     |
    GND
     |
    R2
     |
   Vout

分圧された出力が - 入力に戻ります。 バーチャルショートにより、

𝑉=𝑉+=𝑉in

抵抗分圧より、

𝑉=𝑅1𝑅1+𝑅2𝑉out

したがって、

𝑉out=(1+𝑅2𝑅1)𝑉in

非反転増幅回路は入力インピーダンスが高いので、センサ信号の増幅に使いやすいです。

加算回路

反転増幅回路の入力を複数にすると、加算回路になります。

V1 --- R1 ---+
             |
V2 --- R2 ---+---- - input
             |
V3 --- R3 ---+

仮想接地に向かって各入力電流が流れます。

𝐼=𝑖𝑉𝑖𝑅𝑖

帰還抵抗を 𝑅𝑓 とすると、

𝑉out=𝑅𝑓𝑖𝑉𝑖𝑅𝑖

アナログミキサ、DAC の重み付け加算、制御信号の合成などに使えます。 抵抗で重みを決められるのが便利です。

積分回路

帰還抵抗の代わりにコンデンサを入れると積分回路になります。

Vin --- R ---+---- - input
             |
             C
             |
           Vout

入力電流は、

𝐼=𝑉in𝑅

コンデンサの電流は、

𝐼=𝐶𝑑𝑉out𝑑𝑡

したがって、

𝑉out=1𝑅𝐶𝑉in𝑑𝑡

オペアンプの積分回路は、制御工学やアナログ計算機っぽい回路で出てきます。 ただし、現実にはオフセット電圧やバイアス電流で出力がじわじわ飽和します。 実用回路ではコンデンサに並列抵抗を入れて、直流ゲインを制限することが多いです。

微分回路

入力側にコンデンサ、帰還側に抵抗を入れると微分回路になります。

Vin --- C ---+---- - input
             |
             R
             |
           Vout

コンデンサ電流は、

𝐼=𝐶𝑑𝑉in𝑑𝑡

よって、

𝑉out=𝑅𝐶𝑑𝑉in𝑑𝑡

理想微分回路は高周波ノイズを増幅しやすいです。 実用回路では帯域を制限します。 教科書に載っているからといって、そのままセンサにつなぐとノイズ観測器になります。

差動増幅回路

差動信号は、2 本の線の電圧差として情報を送ります。

Vout
Vout
🍵
🍵
🍵
🍵
V-
V-
V+
V+
Viewer does not support full SVG 1.1

ノイズが 2 本の線に同じように乗る場合、差を取るとキャンセルできます。 これをコモンモードノイズの除去と呼びます。

差動増幅回路では、次の形を目指します。

𝑉out=𝐴(𝑉2𝑉1)

抵抗比が揃っていないと、同相成分も増幅してしまいます。 そのため、ちゃんとした差動入力を扱うなら、抵抗精度や計装アンプ IC を考えます。

雑に組むと「差動っぽい何か」になります。 それでも短い配線の実験なら動いたりするので困る。

レール・ツー・レール

オペアンプは電源電圧の範囲内でしか出力できません。 5 V 単電源なら、理想的には 0 V から 5 V まで出てほしいです。 しかし古いオペアンプでは、出力が電源レール付近まで振れません。

入力も同じです。 入力できる電圧範囲、つまり同相入力範囲があります。

マイコンと一緒に使うなら、次を見ます。

項目見る理由
単電源動作3.3 V / 5 V で動くか
入力同相範囲GND 付近の信号を扱えるか
出力振幅範囲ADC の入力範囲まで振れるか
入力オフセット電圧小さな信号をどれだけ正確に扱えるか
GBW必要な周波数でゲインが残るか
スルーレート大きな信号を高速に動かせるか

「オペアンプなら何でも増幅できる」は嘘です。 データシートを見ます。 結局いつもデータシート。

発振

オペアンプは負帰還で安定に使います。 しかし位相が遅れると、負帰還のつもりが正帰還になり、発振します。

容量性負荷、長い配線、大きすぎるゲイン、速すぎるオペアンプ、雑な電源デカップリングなどで発振します。

対策はだいたい次です。

  • 電源ピン近くに 0.1 uF のデカップリングコンデンサを置く
  • 容量性負荷を直接駆動しない
  • 出力に小さな直列抵抗を入れる
  • データシートの推奨回路を見る
  • ユニティゲイン安定か確認する

オペアンプの発振は、ぱっと見では「なんか値が変」「なんか熱い」ぐらいに見えます。 オシロで見ると急に納得します。

まとめ

オペアンプは、負帰還をかけて使う差動増幅器です。

  • 入力電流はほぼ 0 とみなす
  • 負帰還中は 𝑉+=𝑉 とみなす
  • 反転増幅は 𝑅2𝑅1
  • 非反転増幅は 1+𝑅2𝑅1
  • 積分・微分・加算も同じ考え方で読める
  • 現実のオペアンプには電源範囲、帯域、出力電流、発振の制約がある

理想オペアンプでまず式を出し、最後に現実の制約を戻す。 この順番で読むとかなり楽です。